平面図の中にも主役があり、脇役があります。平面図の中に隠れた主役を見つけ出し、主役を引き立てる脇役を探し出せれば、平面図を見る眼は相当のレベルです。
平面図は文字通り、二次元の平面です。建築は立体でボリュームを持つ三次元空間になります。平面図を読む目的は、二次元の平面図から三次元の立体空間を創造し組み立てることです。
デザインの良し悪しを平面図だけで判断することはできませんが、デザインの肝は平面図に隠れています。平面図の何処に肝があるのかを見つけ出し、デザインの肝に衆目が集まるよう、平面図のバランスを整える作業を設計者は行います。平行して、デザインの肝が映えるよう、立面図や展開図、詳細図でデザインの精度を増していきます。
デザインと聞くとインスピレーションや第六感の鋭さを想像する方も多いと思いますが、デザインを選定、選択し決定する過程は個人の感覚に頼っているわけではなく、コンセプトや素材を吟味する経験に大きな比重が掛かっています。ぶれないコンセプトがあると、デザインも品良く端正な姿を纏いますが、コンセプトを見失うと、糸切れ凧のように風に流されるばかりで、力を失います。
平面図からデザインの肝の勘所を嗅ぎ分けるには、かなりの修練を要します。建物を一つ創るだけで習得できるものではなく、時間を要します。
建築は目的に沿ってつくられます。目的とは機能と言い換えても同義です。機能的な建物をつくるのは建築士の最低限の能力です。各室配置が無理無く機能的で、動線処理も円滑で溜まりや流れるスペース取りも問題の無い平面図を提案し、コンセプトに準じたデザイン提案をするのが建築士の矜持です。
デザインの肝をシンプルに説明できる建築士であれば、信用するに足るものと思いますし、クライアントの疑問に真摯に応える姿勢を感じる建築士を選定するよう心掛ければ、満足度の高い建物やデザインに近づく確率は高くなります。