今回は「動物病院設計は高次のエンジニアリング業務だ」という話です。
「エンジニアリング」という言葉があります。
英語で「Engineering(工学)」を示し、日本的に意訳すると「技術の開発・改善」という意味です。エンジニアリングは、既存技術の改善から新技術の開発まで多岐に渡りますが、「自動化」「省エネ」などはその典型でしょう。
私は、前々職(つまりはACプランのメンバーであるイトレス&ACDのスタッフとして勤務する前)に、このエンジニアリングを主軸とした企業で設計者として働いていました。当時は社会人としても未だ駆け出しでしたので、「そういう社風なんだろう」と思っていましたが、転職後に「井の中の蛙大海を知らず」と知ることになります。
ローマの建築家であるウィトルウィウスは、建築とは「用・強・美」の3つの条件から構成されると定義しました。各々、空間としての実用性、構造的な強さ、デザイン、を示し、それらが保たれることが肝要と示したのです。
それは建築であれば、クリニック・住宅・店舗・工場など、どの建物用途にも当てはまり、建築学生の多くは、早い段階でその言葉を学びます。
しかし実学とは実に悩ましいもので、ひとたび社会に出て手を動かしながら「設計」をすると、その全てを満たすことが難しいという現実に直面します。専門的な施設用途であれば、若き設計者/新参者には利用する人の目線や実用が判断できず、頭を抱えることになります。
彼らには、空間構成(部屋の配置など)は平易に判断ができても、その本懐を理解する上での経験値が不足しているためです。
かといって専門家だから、予め設計条件を全てを俯瞰できているものでもありません。例えば動物病院であれば、病院としての理念・思想といった固有の条件、診療内容の変化、医療機器の技術発展、スタッフの就労環境の変化、などの動向によっても変容します。さらに言えば、新規開業、増改築、改修などの条件にも左右されます。
それらはまさに「エンジニアリング」が示す行為にほかなりません。
ACプランのサービスメニューや初期段階のヒアリングには、そういった意味合いが含まれています。またメンバー間でも情報共有をすることが、総合的な技術改善につながっています。
より多くの情報や知見が引き出すのが動物病院設計の専門家としての責務ですが、今日取り上げたような話を前提にヒアリングにご協力をいただけると幸いです。