移転の前に改修を考えるのは順当です。改修により現状抱える問題が解決方向に向かうのならば改修で良しとするのは妥当です。動物病院改修に必要なものは何かと言えば、真っ先に余剰スペースと答えます。余剰スペースなど何処にも無いと思われる方も多いと思いますが、余剰スペースとは使用していない部屋や余っている部屋や収納もその通り余剰スペースですが、使用する部屋をコンパクトにして少しずつスペースを削り出し、余剰スペースを作り出すことも可能です。しかしながら、余剰スペース削り出し作戦には時間と費用を要し、加えて忍耐力を伴いますので、スペース削り出し作戦への安易な同乗は後悔を産みますので熟慮の上選択して下さい。
土地に余裕がある場合は増築で余剰スペースを創出する方法も有効です。増築をして改修をする場合を増改築と称します。いずれにしても、余剰スペースを探し出し見つけ出すことが改修設計の肝です。『肝』故に『肝』が見つからない或いは見つけられない場合は、改修躊躇の公算が高くなります。肝、即ち余剰スペースが見つかっても改修が必ず上手くいく(成功する)とは限りません。改修計画が順当及び適切に進むためにはいくつかのハードルが待ち受けています。
改修設計の第二の肝は建築構造です。建築構造は大まかに木造、鉄骨造、鉄筋コンクリート造に分類されますが、木造は軸組構法と木造壁構法、鉄骨造は重量鉄骨造と軽量鉄骨造、鉄筋コンクリート造はラーメン構造と壁構造に分かれます。木造軸組構法、重量鉄骨造、鉄筋コンクリートラーメン構造は改修に支障はありませんが、木造壁構法、軽量鉄骨造、鉄筋コンクリート壁構造の改修は構造上の制約が厳しく改修計画は困難を極めます。簡単に言うと、木造壁構法、軽量鉄骨造、鉄筋コンクリート壁構造は改修を諦めた方が無難です。構造上の制約が多い構法での改修平面の自由度は限りなく低く改修目的を達するに至らない可能性は限りなく高いのが実状です。改修計画には既存動物病院の建築構造が大いに関わってきますので、動物病院開業を目指す方々は建築構造についても十分に勉強し配慮することをお勧めします。
改修設計の第三の肝は当初設計の力量です。既存動物病院の設計熟度、動物病院開業時の設計の出来の良し悪しが改修設計の第三の肝になります。開業時に良く練られた設計で、動物病院開業後の姿を見通した設計であれば、改修設計成功の近道になりますが、逆の場合は至難になります。初期設計の出来栄えが改修設計の優劣を決める要因にもなり得ます。
第四の肝は忍耐力です。改修工事は騒音との戦いです。我慢強さを自称する先生方は多いのですが、建築工事と診療サービスが同居する場面を何度も経験する先生は稀です。建築工事は騒音の塊です。騒音の塊の中で医療をした経験の持ち主はいないと考えるのが普通ですから、改修工事騒音に対する不平不満は工事開始からほんの数日で爆発します。爆発と共に工事進捗速度の減速を余儀なくされます。減速は工事の遅延+工事増額に確実に繋がり改修工事終了も延期になりますから(工事の遅延+工事増額)×不満=さらなる大爆発を生む可能性を孕みます。故に、第四の肝『忍耐力』は心に硬く留め置いていただく大事な肝になります。
以上、上記4つの肝が揃うと、動物病院改修設計は順調に進捗します。余剰スペース+上記2つが揃う状況でも改修計画はなんとか成立します。余剰スペース+上記肝1つしか揃わない場合は多くの難題を力づくあるいは目標を下げながら実現を目指すことは可能です。余剰スペース無しで尚且つ増築可能な肝1つの場合は計画遂行可能性は限りなく低く、残念ではありますが、熟慮の上、改修工事は考えないほうが良いだろう・・・と推察します。