テナント動物病院提案は連敗が続いています。正直なところ、2022年に入ってからはテナント動物病院の工事費用が読めない状況にあり、基本構想案の概概算見積振れの懸念の中に埋没しています。
基本構想案の概概算見積は確定見積ではありません。建築の仕上、仕様を決める以前の見積です。概概算見積を工事費用と勘違いするクライアントが多数居るのだろうと思いますが、概概算見積は基本構想案時の工事想定見積であり、建築士が意図する下地材料や仕上材料、設備機器や設備仕様を使う仮定でのテナント動物病院をつくる際の工事金額の指標のひとつに過ぎません。
テナント動物病院の使用想定年数や融資金額の増減によっては工事コスト削減も可能であり、仕上材や建築仕様の選定によっても工事費用減額が可能です。概概算見積は過去に設計監理した動物病院の標準的な仕様を基準に弾き出した工事費用です。安価な工事費用がクライアントの要望として高ければ工事費用の減額は可能です。減額が可能と言っても、設計や仕様、仕上が基本構想案の提案のままで工事費用が下がるのではありません。ローコストに繋がる平面計画、価格の安い仕上材選定、工事仕様の変更と簡易化、必要なものと将来取付でも間に合うものの仕分等々工事費用減額に向けての検討を要します。検討と同時に減額に際しての説明及びクライアント側の理解も要します。減額は開業後のメンテナンスの増加と耐久性能が下がることへの同意と共に覚悟を必要とします。テナント引渡し当初の出来栄えは減額によって大きな差が出ませんが、開業後の耐久性や劣化、損傷は確実に早まります。
概概算見積と実際の工事見積は10%程度の工事費用の振れ幅があります。工事費用を安くするのは難易度の高い作業で、安易に安くすると開業後のメンテナンス費用が膨らみ、通常使用を続けているだけでも数年後には傷みが激しく見窄らしい動物病院になる可能性もあります。クライアントが開業後響いてくるダメージを理解した上で、減額を受け入れ納得した上で設計及び工事を進めて行きたいと考えています。