コラム&ブログ

話しやすい場所であり聞き取りやすい場所であり、入りやすい個室が望ましく、狭くなく広くなく、診察台を挟んで対面しても圧迫感がない程度の距離感を保ちたい部屋が診察室です。近年は診察室で、お客様の目の前で大方の診療を行う獣医師の先生方が増えている傾向です。見せる診察まではいきませんが隠さない診察になる傾向です。
診察室は広すぎると落ちつかず、狭すぎると息が詰まります。動物病院の面積が思い通りに大きくなったり小さくなったりするわけではなく限りがあるので、必要諸室との兼ね合いや診察室数要望によって小さな診察室にせざるを得ない状況は多々あります。小さい診察室がどの程度か・・・およそ2ｍ×2ｍ前後の診察室が使用＆機能に耐え得る最低寸法であろうと経験的に感じています。ちなみに2ｍ×2ｍは壁芯から壁芯の長さです。有効寸法では有りません。故に部屋内の有効寸法は1.85ｍ×1.85ｍ前後になります。

 

 

待合ラウンジから診察室に入るドアは吊引戸を取り付けます。開き戸はドア開閉時の移動動作を伴いお客様に負担を強います。加えてドア開閉に際してドア幅分の余剰スペースを要し、開き勝手方向に侵食します。動物病院の診察室出入口に関しては多面的に検討を重ねた結果、開閉し易く出入りし易い出入口として吊引戸を採用しています。
引戸は引戸幅分の引き込みスペースを要します。診察室出入口の有効寸法は80cm以上欲しいところですから最低でも80cm以上の引き戸引き込みスペースが必要です。診察室引戸の取っ手は老若男女、子供から大人まで開けやすい長さ60㎝以上の棒状ドア引手を取り付けますから、ドア開放時に引手部分が開口部に引き残されます。引き残り寸法（10㎝程度）を考慮すると診察室出入口有効幅は90cm以上（80cm+10㎝）になります。すなわちドア幅90cm以上でドア引き込み寸法も90cm近くになりますので、診察室の出入口側壁の長さは必然的に有効寸法で180㎝以上になります。

 

診察室の間口方向の有効寸法は出入口の引戸寸法により最低寸法が決まります。奥行き方向、獣医師とお客様が対面する方向の寸法は診察台幅と対面する各々の必要最低限寸法から決まります。診察台は100cm×50㎝が一般的です。（猫用診察台は70cm×45㎝程度もあります）診察台を挟んで対面し診療する獣医師と説明を受けるお客様にとってのスペースは立ち話で50㎝程度、椅子に座って70cm前後が最低限です。診察室では椅子も使用しますから最低でも70cm×2人分＋50㎝＝190㎝程度の奥行きを要します。私が設計提案する最小の診察室は間口方向200cm×奥行き方向210㎝程度です。200cm×210㎝よりも狭い診察室で落ち着いて話し、聞き、会話するのは、個人的・感覚的な話しにはなりますが、難しい（ツライ）と考えています。

小さな診察室にはガラス窓が必須です。『必須』は機能的な意味合いで使っているわけではなく、寧ろ精神的、居心地と言うか、心理的な問題解決の一つとして必須と表現しています。小さな部屋が好きな方は居ますが、複数の人や動物が入る状況で小さな部屋は居心地が悪く、長居は辛く、気持ちは落ち着かず、獣医師の説明を理解するにも適正とは言えません。閉所恐怖は誰にでも発症する可能性が有りますが殊更小さな部屋に複数人が詰め込まれると圧迫感や閉塞感を伴い息苦しく感じます。故に小さな診察室には視線が抜けるガラス窓が効果的です。小さな診察室を計画せざるを得ない時は出入口ドアや壁、あるいは天井に近い位置の高い壁に視線の抜けるガラス窓を検討します。

 

 

 

 

音、照明、スイッチ・コンセント、換気扇、空調機位置等々、診察室に関しての話はまだまだ続きがありますが、この項にて全てを書き尽くすには文章が長くなり過ぎ、読むのも理解するのも辛くなるだろうと想像します。故に、診察室・考の続きはいづれ（いつの日か・・・）書こうと（将来書く意思は少なからず持っているの意・・・）思っておりますので、乞うご期待。