そのご相談は「先代から事業承継しましたが、自分が使いやすいように改修が出来ないか」というご相談からはじまりました。そこで既存の動物病院に打ち合わせに参りまして図面を見せていただきながらご希望をヒアリングしました。
実際の外観内装を見て予想はしていたのですが、図面を拝見しますとその構造体が鉄筋コンクリートの壁式構造で、構造的に間取りの変更が難しい建築であることが確認出来ました。この構造体を利用する場合、壁の撤去や移動は難しいため大きな空間を間仕切ることぐらいしか間取りの変更は出来ないため抜本的なプランの変更の御提案は出来ませんでした。
改修計画のご提案では鉄筋コンクリート造の構造体に手を加えず、先生のご希望の所要室とそのレイアウトを検討し間仕切りの組み替えをして使いやすくしてゆくことで新しい動物病院はできないか検討しました。それぞれの部屋の機能の組み替えで3パターンほどご提案しましたがどちらも「帯に短し襷に流し」でご希望の組み合わせが理想に届きませんでした。
そこで、この改修計画そのものを見直すこととし、近隣に移転新築をすることを想定して土地探しを始めることにしました。改修のお問い合わせから数年後、「近くに適した敷地が見つかった」との連絡が先生から入りました。敷地は主要道路と生活道路に面する角地、敷地面積は広く二方向に大きく開けた敷地でしたので広い角度に対しての正面性を確保するよう建物形状は大きな楕円の建築デザインとしました。
平面計画は先生のご希望の必要所室を組み合わせ、臭いのたまりにくい換気計画、防音性能の向上、建築中心部には光を落とすハイサイドライト、外観に違わず様々な機能や空間的な仕掛けをご提案し御満足いただける動物病院、御満足いただける移転拡張計画になりました。
事業承継時に金銭的に無理をして性急な改修して理想的な動物病院にならない場合は、動物病院に適した敷地やテナントを探し、資金を貯め、移転拡張に踏み切ると言った思い切った決断も必要かと考えます。
理想的な動物病院を創るためにも諸条件を検討し計画を立て進めてゆくことが肝要かと思われます。