意外な事と感じる方も多いと思いますが、動物病院の診療スタイルには動物病院ごとの個性があり、開業前に勤めた動物病院の診療スタイルが、開業動物病院のスタイルに影響するのは自然の流れであろうと思います。
移転や改修設計では、要望諸室のヒアリングから診療スタイル、接客方法まで聞き取り、既存動物病院の問題点や踏襲点とともに現状の診療状況を把握し、設計検討に入ります。移転や改修計画提案では、現状を整理し理解する事が設計提案のスタートです。
新規開業の先生方も診療スタイルへの経験則がありますから、初めて開業する動物病院と雖も、要望諸室を確認しながら、診療スタイルに関してのヒアリングを行います。
開業前に経験してきた動物病院の事例を鑑み、散見した動物病院の事例を組み込んで新たな動物病院の診療スタイルを考え、設計に落とし込み使い易い動物病院を目指すことに異論を挟む余地はありません。しかし、頭で考えることと身体で行動することが瞬時に合致するように人間は出来ていないものです。使って見なければ解らないことが数多くあることも承知した上で、平面計画に余剰箇所を設けるおおらかさも動物病院の将来にとっては有益ではなかろうかと、老婆心ながら思います。新規開業時に診療スタイルが確立されている必要はありません。開業後、動物病院を使いながら、年月を重ねて診療スタイルは出来上がります。年月を重ねて確立する診療スタイルに柔軟に対応する平面計画の提案は、動物病院の将来の方向付けに関わる計画上重要な要素と考えています。